廣瀬文彦研で勉学を志す学生の皆様へ 2024.7.17更新

PBL演習Ⅱを受講することで研究室の仮配属となります。

 当研究室では、ナノテクノロジーと原子スケールでの半導体電子材料製造技術を活用して、太陽電池、薄膜トランジスタ、センサデバイスの最先端研究をしております。三年生の皆様が配属になりましたら、どんなところから着手いたしましょうか。4年生以降本格的な研究に携わっていただこうと思いますが、初心者のナノテク入門として次のようなメニューをこなしていただいて、自らの手でナノを体感していただこうと考えています。そこでの経験をもとに研究テーマを割り振りしていこうと思います。当研究室で最先端の研究装置を保有していますので、三年生の若いうちにこうした装置を体感することは、自分の将来の専門に対するイメージを作ることにも役立ちます。

PBL演習Ⅱの講義内容は次を予定しています。

1. 電子顕微鏡の観察体験 
 廣瀬研究室では、電子顕微鏡を自家保有しております。これを使って身近なナノ構造やデバイスを評価してみましょう。ここでは電子顕微鏡の原理と観察方法を理解します。


2. AFMでみる固体表面観察
タブレットパソコンほどの大きさではありますが、数ナノメートルほどの形状を表することが可能です。

 

3. 半導体デバイスの評価解析
 実際に半導体デバイスとして、バイポーラトランジスタ、pnダイオードを最先端の評価設備を使って電気特性の評価を体験してみます。当研究室には、最新の半導体評価設備、Kethlay2634Bがあり、これをつかって高精度デバイス評価を体験します。

 

4.半導体デバイス・太陽電池の製造体験
 自らの手でFETや太陽電池を試作してもらおうと思います。教科書で覚えた半導体デバイスを自らの手で製作できる体験は、一生のうちに何度できることでもないでしょう。できだけ若いうちに体験していただいて、デバイスの興味をもってもうらおうとおもいます。


5.半導体デバイスレクチャー
 毎週廣瀬のゼミを行いますので、ご参加願います。

6.研究テーマを決めます。12月ごろ  2023年は次の研究テーマを予定しております。
①原子層堆積を用いた高性能ナノ材料デバイスの研究
②室温原子層堆積を用いた薄膜酸化チタントランジスタセンサの試作と評価
③可視光光触媒デバイスの試作と評価 
④高移動度薄膜トランジスタの電子デバイスシミュレーション 
⑤色素増感太陽電池の高効率化研究

廣瀬研究室で学ぶメリット

 こちらの研究室では、ナノテクノロジーを実体験をもって(実験を通して)学びながら、次世代のエレクトロニクスを担う新デバイスの研究をしています。ここでは新しく来られる学生さんに、ナノテクを学んで本当によかったとおもっていただけるよう、楽しく精一杯指導してく予定です。次のメリットをご覧ください。

 廣瀬研究室では随時見学や内覧会を行っております。
気軽に10号館2Fをお尋ねください。

1)世界的拠点を目指す最先端研究設備で研究経験を獲得できます。
 当研究室では、原子層堆積法では最先端の研究力を保持しており、それを活かしたナノテクノロジー研究を進めています。東北大学などの旧帝国大学と比較しても、トップレベルの研究設備を有しております。多くの大学、国研、企業様が当研究室の設備を活用して研究をされています。当研究室の独自性は、他大学では不可能な金属セラミックスの室温形成にあり、従来技術では対応が不可能でした。室温金属セラミックス膜は新しい電子物性を開拓する手法として世界的に注目を集めています。当研究室では大型研究プロジェクトを展開中で充実した研究資金の元、外国学会や国際展示会にでたりと、大手大学でも経験できない最先端研究活動に身を置くことができます。研究室に配属になった4年生から世界レベルを目指して研究活動ができます。2015年度配属の4年生の半数の学生さんが、研究成果が著しく2016年度アイルランドでの国際会議に参加することになりました。山大生の意識を完全に振り払って、世界に挑戦できるチャンスが当研究室にはございます。



2)新4年生であっても世界に通じる最先端の研究テーマを提供します。
 何やら難しいことをやってそうで気後れするかもしれませんが、心配しないでください。どんな小さなことも一歩からです。学部3年生、4年生の皆様は、太陽電池やFET、デバイスを試作しながら実体験をもとに着実に学んでいってください。廣瀬研究室では研究室で学ぶためのテキストを独自に作成し提供しています。半導体をわかりやすく教えるゼミも毎週行っております。ただ、わかりやすくても内容は高く、誰しもが博士を目指せる研究ができるよう最先端の研究テーマを提供します。
 そして、成果が実れば、研究室で旅費を全額100%支給して学会に派遣して発表する機会を提供します。当研究室では学生の旅費は100%、研究室から支給するポリシーをもっております。また、ある程度のレベルに達したら海外に行くチャンスもあたえています。海外の学会では毎年、1~3名程度、国内でしたらマスターの学生さんはほぼ全員参加しています。下の写真のように、2019年も学生を延べ4名派遣しました.大変そうですが、常に自分の成長が感じられる研究室なのでやりがいがあるとおもいます。廣瀬研究室のだいご味はマスターからです。マスターの研究を充実させて世界に打って出ましょう。

ALD2019参加

 

3)デバイス界面を制御して新機能デバイスを目指す研究の意味
 有機デバイスや半導体デバイスの世界では、研究の常道として半導体膜の純度や結晶性を高めてデバイスの高性能化をする手法がとられています。確かにそれは正しい方向なのですが、膜の界面について殆ど考慮がされてはおりません。しかし、多くの技術者が界面の重要性を知っています。たとえばバイポーラトランジスタにおいて、ベース層の上にポリシリコンエミッタ層を形成しますが、このベースエミッタ界面を1原子層程度で化学修飾をすることで、著しい性能向上ができることが知られていて、各メーカーは非公開のノウハウとして技術を蓄積しています。太陽電池でも同様に1原子層での界面層形成が大きく性能に影響を与えることが、知られています。多くの研究者が必要性がわかっていながら、そこに科学のメスがはいっていないのです。廣瀬研ではその未踏の部分を解明することで、新機能デバイスの実現を目指しています。具体的には、超ローコスト高効率太陽電池と超高速スイッチングトランジスタの研究です。これを実現するために、廣瀬研ではSi太陽電池、有機無機太陽電池、超高速ダイオードデバイスの製作技術のほかに、原子層堆積技術、ショットキー解析、C-V解析、超高感度赤外吸収分光技術を保有しており、20%超の高効率の太陽電池の実現を目指しています。
 多くの半導体研究室では膜づくりに追われて、殆どデバイスづくりを経験できないのが実情です。私も学生のころデバイスの研究者を目指して入門しましたが、デバイスに触れることなく膜の研究に終始しました。しかしここでは違います。どの学生もなんらかの形でデバイスを作って評価する研究が組まれており、基礎研究でも出口を体験できることが大きな魅力になっています。日本の多くの大学が殆どデバイスづくりをやっていません。膜づくりも重要ですが、デバイスからの観点も研究には必要になります。そんな体験がここで味わうことができます。ぜひ比べてみてください。

下の写真は太陽電池の試作風景です。大手の大学でもこのように一から太陽電池を作らせてもらう経験はなかなかできません。

4)研究室の教育で自分の成長を実感するということ
 廣瀬の教育のスキルは他の先生に比べてもまだまだではありますが、次のようなことを心がけています。詳しい教育プログラムについてはこちらをごらんください。
 ①研究の基礎学問としての電磁気、電気回路、電子回路、線形代数、微分方程式、制御、プログラミングを大事にしています。
 廣瀬が過去にメーカーで研究者をしていた経験から上記科目の大事さを大変よく知っています。廣瀬はこれらの科目はすべて網羅してますので、ナノテクや半導体を教えながらも、現場での経験をもとに、ゼミや討論の中で研究室員と語り合いながらこれら知識を育むように努力しています。
 ②作業ではない問題解決を目的とした研究計画
 多くの学生さんの卒業研究で、ただ作業をこなすことが研究目的になっているパターンが多くみられます。作業報告の卒論は少々物足りないとおもいます。文献を調査して、工学のニーズをとらえて、課題設定とその解決を自ら、そして先生と相談しながら進めていくこと。それを大切に指導しています。
 ③英語の大切さ
 皆さんは今まで学校の英語で相当な時間数をかけてきましたが、もう社会にでる一歩手前で、しっかり英語を学んでいきたいと思います。

5)共同研究企業と接触する中で自然と業界研究をすることができます。
 当研究室では、半導体、化学メーカーと共同研究を取り行っております。研究室に業界研究者が多く出入りしています。そのなかで、自然と企業研究をすることができたり、そのご縁で就職していく学生も多数います。

6)超ローコスト太陽電池に関わることができます。
 今日本の太陽電池のロードマップには超高効率太陽電池(40%変換効率)の研究が大盛況です。しかし、これら電池はたとえ実用化されたとしても非常に値段が高いのが問題です。世間は量子ドットとおおはやりですが、漏れ電流を考えたら歩留まりにも問題がありそうです。私自身は残りの研究者人生を太陽電池の普及にかけたいと思っておりますが、あまり科学者がやらない超ローコスト太陽電池の研究をおこなっています。材料コストが10分の1で15%効率の電池ができたら素晴らしいですね。

7)ナノテク研究のために進んだファシリティー
 当研究室では太陽電池の製作から評価まで充実した設備を誇ります。大手大学、企業からも当研究室のファシリティを利用しにくるケースが多々あります。皆さんも進んだファシリティをこの手で利用して、自然とジョブスキルを身につけることができます。

みなさんも廣瀬研で研究をしてみませんか。
廣瀬研究室では随時見学や内覧会を行っております。 気軽に10号館2Fをお尋ねください

卒業研究の教育
 研究室に配属されると個人個人に希望を聴取した上でほぼ独立したテーマが与えられます。それぞれ独立したテーマではありますが、共通なところは大いにあります。半導体デバイスを学ぶのに、電磁気学1、電子物性、電子回路の知識が必要になります。研究室では随時、関連するテーマの学生をまとめて、ゼミとして講義したり、課題をあたえたりして実力を高めてもらいます。またおおいに力のつくものとして、雑誌会があります。英語の数ページ程度の論文を読んでもらい、パワーポイントで発表をしてもらいます。これが年に3-4回まわってきます。これで英語文献の読解力をつけてもらいます。大切なのは、この若い時期に伸びてもらうことです。本人の性格や志向をみて適宜課題を出しながら卒業研究を遂行してもらいます。

修士課程の教育
 修士になると定期的に廣瀬とミーティングをしながら、研究にいそしんでもらいます。大切なことは、与えられた目標に対して、しっかりと他者の論文を読んで、自分の結果と見比べながら、対策や研究の方針を考えていくことです。修士になると、研究に対して指示待ちではなく、自分で考えてもらいます。定期的なミーティングで廣瀬と話し合いながら、すこしずつその癖をつけてもらいます。はじめは学生に意見をいってもらおうとすると、黙ってしまって、ぽつぽつだったり、支離滅裂な言葉だったりするのも、M2くらいになってくるとだいぶ改善されます。また、多くの人前にでてもやれる自信がついてくるはずです。修士のいずれかの時期に国内有数の学会(応用物理学会、電気化学、電子情報通信学会)に参加してもらい、研究発表をしてもらいます。多いに自信になるはずです。

博士課程の教育
 当研究室はこれまで博士学位取得者3名を輩出してきました。博士を出ることで、大学での研究者の道、企業での研究を企画するチャンスが広がります。マスターでも研究の世界に行くことはできますが、企業ではチャンスが非常に少ないです。世界にいたってはマスターでは研究のフィールドにエントリーすることも難しいです。研究で自分を試したい方は急がばまわれです。課程博士でできるだけ若いうちに学位を取得することをお勧めします。
 このステージではひたすら分析能力、アイデア、企画能力を鍛えてもらいます。外国の論文投稿や学会発表で、英語、プレゼン、自己アピールする能力を鍛えます。卒業後の転身先についても研究業界や企業とも十分に接点をもって研究ができるよう様々なチャンスを提供します。
 山形大学では、博士後期をのコースは大変充実しておりまして、企業研究者や大学研究者になることは十分可能です。地方大での限界を思う方もいらっしゃいますが、今の時代は学歴は関係ありません。むしろ自分の能力にあった環境で、しっかり学び、どんな技術を作ってきたか、そしでどのような研究能力を身に付けたかが問われます。私も経験しましたが、多くの大手の大学では、博士の学生はしばしば一人で研究することが多く、自らを律し一人で自己努力することが要求されます。しかしそのようなスタイルは現代っ子には合いません。当研究室では廣瀬がしっかりと指導いたします。定期討論とアイデアだし、指示待ちにならないよう、様々な形で課題をこなしてもらいます。その過程で、自分で企画して研究をしていくすばらしさを体験してもらいます。
 当研究室の博士コースに入門してきた方の殆どが、修士学で就職し再入門されました。それぞれ動機は異なりますが、企業でも自ら開拓的に動くためには、修士では不十分であることを感じている方多いようです。どうしても修士では会社の指示受けで動き、発案のチャンスが少なくなります。企画発想の自由を獲得したいと思うなら、まずそのファーストステップとして博士の学位を取得されることをお勧めします。

2024年度配属3年生の研究テーマは次のとおりです。
 当研究室では太陽電池とそれにかかわる界面制御技術の構築に力を入れて研究しています。その他探索的な研究もありますが、基本的に皆さんの希望をききながら、将来の希望する職業像のあわせて、研究テーマを決めています。テーマによっては2-3年じっくりやってほしいものもありますが、その場合は進学希望者に担当してもらいます。

ナノテクノロジー研究
①原子層堆積を用いた高性能ナノ材料デバイスの研究(山大進学予定者) 1名
 当研究室は室温原子層堆積法を開発した拠点として活発に原子層堆積プロセスの研究を進めています。現在は複合酸化物という二種類の半導体を周期層として堆積することで、新しい半導体材料を創出できる可能性があります。本研究では、酸化チタン、酸化亜鉛の複合、さらに酸化亜鉛と酸化アルミの複合を検討し、高移動度TFT、センサー、またバリア膜への適用を狙います。大型研究プロジェクトになる可能性があり、海外学会の発表の参加の機会もあります。

②室温原子層堆積を用いた薄膜酸化チタントランジスタセンサの試作と評価(山大進学予定者) 1名
 酸化亜鉛は薄膜トランジスタ材料として使われますが、p形薄膜が完成できれば、紫外線レーザーやディスプレイへの応用が期待できます。当研究室ではかねてより、酸化亜鉛の窒素ドープ技術の研究をすすて来ており、この研究ではその製造方法と薄膜トランジスタとしてのデバイス応用の研究を進めます。

③ 可視光光触媒デバイスの試作と評価 1名
 当研究室のオリジナル技術である原子層堆積法を使って、可視光光触媒デバイスの実現を狙います。最終的には水素製造の実現を目指します。

④高移動度薄膜トランジスタの電子デバイスシミュレーション 1名
 廣瀬研究室で開発している高移動度トランジスタを最新鋭のSILVACOを使ってシミュレーションをつかって動作解析を行います。LSIメーカーへ就職を考えている方にはよい技術スキルになります。


太陽電池研究 
⑤色素増感太陽電池の高効率化研究(山大進学予定者) 1名 
 ローコスト太陽電池としての色素増感太陽電池において、実用化のためには10%を超える効率が求められています。そのために、電極表面の界面修飾技術の研究を行います。太陽電池・半導体製造に興味のある方へどうぞ。


その他皆様が気になるであろうことについてお答えします
①廣瀬研の方針
 現在あなた方がいずれ卒業して入ろうとする社会は、リクルート関連のサイトでみる華やかな事情とは裏腹に、実にストレスの大きい世界です。実際に入ってみれば分かります。長いバブルの崩壊の後の失われた10年で従業員に多大な精神的負担が課せられる時代になりました。今から20年くらいまではよかったのです。一つの技術を学べばそれで20年くらいは生活できた、スローライフの時代でしたから。しかし、これからはそうはいきません。製品のライフタイムは4-5年で、技術者は絶えず努力して、新しい技術を吸収し、創意工夫をしていかねばなりません。新卒ではいっても努力しなければ、5年で子会社に飛ばされ、リストラされてしまう厳しい時代なのです。上司の怒鳴り散らしにもめげずに、必死に自分の存在価値を訴えていかなければならないのです。今の学生はどうか。残念ながら、自分の世界に引きこもって、おとなしくぼんやりした人が多く、簡単に競争に負けてしまいそうです。 廣瀬が10年前の赴任当時から常に強く感じてきたことです。
 なんとかして自信をもってもらいたい。学生たちはまだまだ勉強が足りないけど、それぞれ光る部分をもっています。しかしそれに気付かず、大変不安にすごしています。単に今まで勉強をする癖がなかっただけで、その喜びをしらなかっただけなのです。当研究室ではそのような学生に対して、できるだけ自信をもって社会にいっていただけるよう、基礎からみっちり勉強してもらい、最先端の研究をテーマで社会にPRをして欲しいと思っています。私は東北大の出身で、敬愛の念をもっていますが、モットーは「米沢にいて最先端」、「東北大学に引けをとらない自信をつけもらう」ということです。

②所詮山大でやれっこない、高望みしても無駄ではないのか?
 多くの山大生が自信がなく、より低いところで安住しようとします。たとえば就職活動でも、研究開発よりは、工事や販売など、大学で学んだものを必要としない、高卒でもアルバイトでもできる簡単な仕事を志望する学生が多く見られます。もちろん自分にあったレベルで人生の選択をすることは重要ですが、あまりにも国立大卒からかけ離れたレベルを志望するのは損をすることになります。なぜなら多くの企業が、国立大卒の学生にはそれなりに開発最前線で開拓的な仕事をしてほしい、山形県企業でしたらゆくゆくは幹部候補生と思っていますし、そんな低レベルな仕事をするのであれば、高い給料をあげる必要はないわけですから、当然就職で落とされて帰ってきます。実は就活でだめなのは、あまりにも志向が低いのが理由である場合も多いのです。
 見方を変えましょう。山大は過去の卒業生が社会で活躍しているためでしょう。大変就職がいい大学のひとつです。あなた方がモーティベーションをもって就職活動に望めば、一流と称する大手企業に入ることも夢ではありません。しかし、多くの学生が大手にビビり、小さめの子会社を志望します。大手でも小さくても入社時の給料に差はありません。しかし、10年たって会社の福利厚生も含めて、年収に大きな差がでます。小さい会社はときとして利益をだす構造が大手に比べ弱く、死ぬほどつらい残業を若手社員がしてなんとか支えている場合もあります。安住しようとして低志向で死地に迷い込むこむわけです。大企業にいくことがすべてかというとそうわけではありません。大企業でももちろん大変な競争で生存努力をしています。大切なのは少しでも実力をつけて、自分の希望が描ける職業につくことです。向上心を忘れて安楽をむさぼることは、競争社会のはきだめにおいやられることを意味します。

③大学院には進学した方がよいか
 よく聞かれる質問です。それは本人の人生設計によりますのでだれでも答えは同じではありません。多くの学生さんは、これまで高校では周りの人が進学するからなんとなく大学に進学して、今まで人生の目標を持たずにきたと思います。卒業2年前になってそれを急に考えよというのは無理かもしれません。しかし、それでも自分で即刻考えねばなりません。まずはそこからです。

私は多くの学生さんに進学、やる気さえあればドクターまで進学することを勧めています。私が進めるのは次の理由からです。

・将来技術系会社で開発や研究を目指すのであれば、学部卒では全く通用しません。今はもマスター出が普通になってきています。

・より高い学位をもつことで、自分の技術者としての人生に自由が生まれます。どうしても学卒からだと見習いからはじまります。その分下積みの期間が長くなるわけです。会社でも上司先輩に恵まれれば伸びますが、下積みでまっすぐ力をつけるのは容易ではありません。いくらあなたが経験をつんでも学歴の壁で思うとおりに物が運べないこともあります。大学ではたかが2年の修士、そして3年の博士(長いようにみえて短い)のコースをでることで、それだけ信頼される地位を与えられる可能性があり、その分自由を得やすくなります。

・進学して費やす時間、費用は必ず回収できます。なぜなら、学卒に対して修士、修士に対して博士、と就職先のレベルも高くなります。昇進のスピードも断然速くなります。リストラされてもすぐ次の転職先もみつかります。生涯年収で損になるどころか大きくプラスになる可能性がでます。なおドクターコースではほぼ全員育英会の奨学金が取れるほか、TA、RAなどで年200万程度の収入が期待できます。勿論授業料免除の申請も出せます。ドクターコースに限ればさほど学費はかなり抑えることができます。

・大学に入るときは偏差値で下だったあなたも修士で就職するときは大手の大学の出身の学生に対して格差を感じなくなることでしょう。そう山大の院の質は極めて高く、大学進学で出遅れた方でも逆転が狙えます。

・院に進学すると英語力が間違いなくアップします。多くの技術文献を読んで、発表したりと、社会人では経験できないレベルアップが可能です。英語はこれからの必須です。院での研究生活で自然と英語を身に付けることができます。

・半導体業界の多くのエンジニアが社会人としてドクターコースに通っています。修士卒ではこの世界ですとさびしい思いをすることもございます。社会人で博士を取るのは極めて大変な苦労をします。いずれ苦労するなら、若いうちに奨学金をもらって3年でさくっと取った方が楽です。

④アルバイトについて
 アルバイトについてはよほど生活が困難でない限りおすすめしていません。もちろん学生さんにはそれぞれ事情がございますので、一概には言えませんが、遊ぶためのお金でしたら、就職してからたっぷり楽しめますので、今の時点では自分の武器となる技術力向上についやすことをお勧めいたします。
⑤何を勉強したらよいか
 自分の将来像が描ける人はそれにあわせて何を勉強したらよいかわかると思います。まずは、基礎は重要です。電磁気学、電子物性、数学、英語の教科書を普段から開いて読む癖をつけてください。必ず役に立ちます。

⑥将来、やっていけるかどうか不安
 気持ちはよくわかります。だれでも不安です。不安でない人はいません。そのように感じているあなたに逆質問です。「不安に感じているのであれば、あなたは今何をしたらよいですか」。考えてみてください。おのずと答えは出るでしょう。少しでも学んで、自分の自信のあるものを作っていきましょう。いきなりはできないのです。すこしずつ積み重ねて行くしかないのです。山大工学部はそのようなあなたたちに優しく学びの場を提供してくれます。(他ではもっと厳しい道場のようなところもある) 気付いたときが出発です。今からでも前進していきましょう。