太陽電池・デバイス研究
Si太陽電池
私たちの住む地球が化石燃料の燃焼によるCO2排出より大規模な気候変動に見舞われています。温暖化を少しでも食い止めるべく、わが国は温室効果ガス排出の削減を約束していますが、その目標達成がかなり困難になっていることは皆さんもご存知でしょう。こうした中、地表に燦燦と降りそそぐ太陽光をエネルギー源とした太陽光発電の進展に大きな期待が寄せられています。
そもそも太陽電池がこの世に登場したのは1954年のことであり、それはアメリカのベル研究所で発明されたシリコン太陽電池です。シリコン太陽電池はこれまでの60年近くの歴史のなかで、持続的な改良がなされ、現在発電効率は24.5%に達しています。性能向上では熟成に入った感がありますが、普及という点ではいまひとつです。太陽電池の普及を阻んでいるのは、コストの高さです。現在でも家庭用太陽電池パネルはたたみ一畳で100万円以上の値段をしており、誰しもが手軽に家庭に取り付けられる状況ではありません。いかに安くて性能のよい太陽電池を作るかが課題であり、当研究室ではアトミックレベルの界面制御技術を活用して低コストSi電池を作る研究を進めています。
界面制御型色素増感太陽電池
1991年にスイスのグレッゼル博士により、Ru色素で染めた酸化Tiと金属電極、それらを電解液で挟んで対向させて電池にしたところ、11%近い発電効率があることが公表されました。以来、世界的にも大変注目されている研究です。 こちらでは、なぜこの電池が発電するのか、キャリアの輸送機構にまでさかのぼって、発電メカニズムを明らかにして、世界最高効率を目指します。
現在効率は~10%程度まで得られています。
透明導電膜上に酸化Ti微粒子をつけてそこに色素を沈着させてマイナス極とします。ヨウ素電解液を挟んで、白金のついた透明導電膜をプラス極とします。光が色素にあたると電子が出てマイナス極を通して負荷に流れます。同時に色素からホールが発生し、ヨウ素溶液を酸化します。同時に、プラス極から電子が供給されてヨウ素溶液を還元させて平衡状態になります。この一連の動作が負荷に電流を流すことになり、発電となります。
当研究室では、TiO2表面に原子層堆積法を用いて新しい機能膜を修飾して、色素吸着を促進し、電荷の再結合を抑制させて太陽電池性能の向上を図っています。色素の吸着構造を解析すると、いかに吸着を促進させるかアイデアが生まれてきます。当研究室では酸化チタンにUV処理をすることで人工吸着サイトを形成し、色素吸着を促進させて発電効率の改善に成功しました。このデータは自動車用ハロゲンランプで出力特性を取得したものですが、UV処理であきらかに発電電流が増加していることがわかります。何もしないときに比べ、1.15倍ほど発電効率が向上します。この技術で現在AM-1.5で100mW光で6~7%の発電効率を実現しています。
光酸化チタン電極にUV処理、水蒸気処理したときの発電性能向上効果
有機無機太陽電池
有機太陽電池には電子アクセプタとしてフラーレンが使われますが、フラーレンは大気に対して容易に酸化されるため耐久性が懸念されています。また材料コストも非常に高いのが難点です。
廣瀬研のルーツはSiテクノロジーにあり、n型で低コストで成膜できる酸化物半導体(TiO2やZnO)や多結晶Siが代替材料にならないか考えました。現在P3HT/TiO2や6T/n-Siなどヘテロ接合を試作して、どれも非常に美しい整流特性が得られることがわかりました。また、n-Siにおいて、1%近い発電もできることがわかりました。この電池の素晴らしいところは、たとえn-Siを使っていても、拡散やドーピングなどの一切高温処理は不要であり、150℃以下の温度で電池を製作することが可能であることです。従来、Si電池のフレキ化が難しかったのはドーピングのために400℃の熱処理が必要で、フレキシブル基材が耐えられなかったことにあります。この技術を使うとそれが一切不要であり、Siのフレキ化が容易に実現できます。当研究室で、V-IやC-V解析を使い、拡散電位を計測して、電荷分離効率を高める界面形成技術について研究を進めています。
6T/n-Si太陽電池 同電池の暗示に整流特性